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2012年12月13日 (木)

「ちょっと変わったこと言ってれば個性的」と思ってはいけない

Protectgear11jpg

カスタムバトー in プロテクトギア
がぶさんの生み出す作品もまたその遺伝子の表現型
これはがぶさんの「遺伝子」ではなく、あくまで表現型です。

こんな古い写真を引っ張り出してきましたのは、バトーさんのいい台詞を今回とりあげようと思ったからです。
バトーさん、といえば


「御託はいいから撃ってこい!」(#16 心の隙間 AG2O)
とか
「変えられない過去なら、いっそこのまま墓場まで持って行くさ」(#10 密林航路にうってつけの日 jungle cruise)
などまだとりあげてないいい台詞があるのですが、今回はべつのもの。
長台詞のなかのこの一節。






「ゴーストが信じられないような野郎にゃ狂気だの精神分裂だのって結構なもんもありゃしねぇ」






イノセンスよりキムさんに返したバトーの言葉です。




発言環境:連続猟奇殺人を含むガイノイド暴走事件を追って択捉へ飛んだトグサとバトーは情報源キムと接触するが、凄腕ハッカーである彼の作り出した擬似記憶に三度振回される。素子のアシストで仮想世界であることに気づいたバトーが、キムに電脳錠を掛ける前に放った台詞。



台詞全体は以下のごとく
「オレもお前と同じくくだらねぇ人間だが、オレとお前とじゃ履いてる靴が違う。ゴーストが信じられないような野郎にゃ狂気だの精神分裂だのって結構なものもありゃしねぇ。お前の残り少ない肉体は破滅することなく、分相応な死ってやつが迎えにくるまで物理的に機能するだろうよ」


こわいだろ~、死ぬのこわいだろう~、お前らみんなこんなもんなんだよ、脆弱な代物だよ、がらんがらんのがっしゃーん!だよ、ひゃ~っ!はっはっはぁ~っ!
って感じだったねぇ、あの仮想現実。まじ時間の無駄。
いかれた世界でもっともらしい引用を交えて持論を展開し、仮想現実でさんざん振回してくれたキムに反撃したバトーの一言は実に爽快。
御託並べて何言ってんだか、この人、って思っていたら、ずばっと切り裂いてくれましたね。


キムさんの言ってることって、人間不信をこじらせたあげくに「僕は君たちを上から目線で切り捨てることにした!」って逆切れしてるようにしかみえない。
頭いいんでしょうけど、目線が細すぎて視界不良なんでしょうかね。
難しいこと並べ立てる割に大事なものが見えてないなぁ、という気がしていた。





相手の魂を感じることがないのって不幸だよな、と思う。





バトーに反撃食らってもなお、キムは
「これが仮想現実でないといいきれるのか?」
と相手の不安を煽るようなことをいい、精神的優位に立とうとするのですが、これにバトーは切り返す。
「囁くのさ、オレのゴーストが」
これが当たりだ、とわかる感覚は口で説明するものではない。
そういうの信じてもらう必要もないし、キムがバトーの言葉に納得できないならそれ以上いう必要もない。




自分の魂も感じることができないのは死んでるようなもんだよな、と思う。




もし彼が電脳錠掛けられていなかったら
「魂って、なにオカルトなこといってんの?」(冷笑)
みたいなこというかもしれん。
スカした人にはわからんのだろうなぁ。
ストレスの巣みたいなところにいるとそうなるのかな。
(戦争が奴を変えた、的なこといってましたしね、バトーさん)
キムさんは頭がおかしいのでもなんでもなく、ただの逆切れ野郎なだけ。
感情が逆噴射して他人を弄んで気晴らししてるだけ。
トグサの頭、ぱっかーん!って割って見せたのも
「おもしろい?ねぇねぇ、おもしろいでしょ!顔、ぱかーんって割れてるし!ぷぷ・・・」
みたいな、自分ひとりで楽しんでるだけ。
そういうので驚いたり怖がったりすると思われるなんて、軽くみられたもんですよねー、バトーさん。




キムさんの言い回しって、難しい言葉ならべてるけど結局子供臭さが抜け切らない。
意志があるから能力に限界があるとか、深みがないのは彼が人間を軽く見てるから。
魂なんて、って鼻で笑っているのは人の強さを知らないから。
知りもしないのにバカにするのは、気がふれたんじゃなくただの僻み。
気ぃふれた振りしてれば何でも通ると思うなよ?




「ゴーストも信じられないような輩には精神分裂を名乗る資格すらないわ、ぼけ」




魂が存在しないと思うなら狂う精神すらもっていないわけで、高尚な言葉並べたって
「屁理屈こねてるだけだろ、お前」
と言われてもしょうがない。
バトーは、キムの所業は只の悪趣味で彼が心底狂ってないと見抜いているから、時間を無駄にしてくれた彼を一蹴した。
ほんとにねー、こっちは急いでるんだよ、連続殺人事件解決しなきゃならんのだよ、お前の遊びに付き合ってる暇ないんだよ、そろそろ仕事の話しようぜ、ですよ。


強さも弱さも知らない、青年期の痛手をこじらせて逃げてるままのキムおじさん。
対して、痛みも屈辱も味わってなお人間と魂を信じてるバトーさん。
大人ですね。
イノセンスの小難しくしたてた世界観の中では、比較的理解しやすい好きな台詞。
「林の中の象」みたいに引用もあやふやな台詞より、こういうのがいい。






蛇足


後に続く「残り少ない肉体~」の台詞は、バトーからキムへの屈辱のプレゼント。
細胞の寿命の数だけ肉体は物理的にのみ存在し続ける、っていうのはキムのいう意志のない人間を示し彼の理想であったはずですが、実際それは彼の本望であったのか。
電脳錠掛けられたキムさんは
「あへ
な顔してますけど、そうなりたいと思っていたかどうかは不明。
御託ならべて他人を弄んで暇つぶしするのが好きだった彼にとっては、身体だけ生かされるのはやはり屈辱にはいるのではないか、と犬は思いました。

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